■仕事のルール76「ピンチをチャンスに」

 順調に人生を送ってきた人が、小さなつまずきでも耐えきれず、そのままドロップアウトしてしまうことがあります。打たれ弱い、という言い方をされることが多いですね。

 昔は「苦労は買ってでもしろ」と言われていました。ピンチも苦労の一つです。わざわざ買う必要はありませんが(笑)。ただ、ピンチは人を成長させます。苦境に立ったとき、人は全ての感覚を使って、その危機から脱しようとします。そこには、通常では思いつかないようなアイデアが埋まっているのです。いわゆる「火事場のバカ力」ですね。

 リミッターが切れた段階で、ようやく出てくる力のことです。これは潜在的に持っているのに、危機に立たされるまで浮かんでこない種類のものなのです。ピンチ・苦境に何度か立たされると、脱出方法も学ぶようになります。最初の機会ではピンチだったかもしれませんが、同じことに2度目にあったときには、それはすでに「経験済み」となるわけですね。

 私は、経営大学院留学のため、日本の大学の卒業式を待たず、さっさと渡米してしまいました。7校も受けたので、どこか1校くらいは入るだろうと思い、周りの人に留学宣言したところ、祝賀会までやってくれました。ところが渡米後、すべて受験に失敗。途方にくれていたところ、元々その会社で働きたかったため経営大学院を受験した、米国大手国際会計・経営コンサルティング会社に無事採用。ピンチでしたが、結果的にはチャンスになりました。

 ただ、ピンチの時には必ず脱出できるとは限りません。脱出できず負けてしまうこともあります。負けから学ぶことも大いにあります。これも経験です。ただし、この経験を以降、間違えて使っては困ります。負けることに慣れてしまう、いわゆる「負け癖」がつくような経験にはしてはいけないのです。負けた時にでも、負けを認め、その中から負けた理由・原因を学び、次に負けないように回避方法を身につけて、次にはしっかり脱出する。負けの経験は、次の価値につなげる経験値としなければ、経験が無駄になってしまうのです。

 ピンチを知っている人間は、それだけ通常では出てこない力を使った経験があるということになります。これは、ピンチに陥っていない人よりも大きな知恵にもなり、大きな武器にもなるのです。こんなチャンス、望んで手にできるものでもありません。多いにピンチで学び取ることをお薦めします。

 つまり、ピンチは望んでもできない大きな経験ですよ。