■仕事のルール85「電話は短くポイントをついた内容を話そう」

 人と約束をするとき、まずは電話を使うことが多くなったでしょう。

 最近ではメールも多用されるでしょうが、最終決定や確認のために電話をする、というのは通常行われている行為だと思います。

 電話をかける場合、相手がその時間何をしているのか見えません。相手の時間に突然割り込む行為だということを、電話をかけるときには忘れてはいけないのです。ということは、相手は機嫌よく電話口に出たとしても、通常何らかの作業を中断しています。

 そこで、電話での会話は、重要なポイントをついてできるだけ短い時間で済ませるように心がけましょう。

 もしも、電話をかける前に長くなりそうな場合は、それこそメールの出番です。メールで「お話をお伺いしたいのですが、少々時間が掛かると思います。ご都合のいい時間をお伝え頂ければ、こちらからご指定の時間にお電話差し上げます。などと、最初から断っておくと、相手もそのつもりで時間をとってくれるはずです。

 顧問先で、一流大学、大手商社出身の中堅幹部を雇うことになり、社長に最終面接に同席するよう言われて立会いました。経歴書は立派だし、人柄も良さそうなので、問題ないのではということで採用が決まりました。

 ところが大いに問題がありました。彼は「長電話魔」だったのです。

 一度電話で話し出したら止まりません。世間話から始まって、忙しい相手を捕まえて長い長い冗談を連発。かわいそうなのは相手先です。「長電話魔」で知られた彼は、顧客からは相手にされず、結局、下請けのリストラ対象としか話してもらえなくなりました。それもそうです。一度電話をかけてきたら平気で30分。場合によっては1時間も話し続ける。相手もたまったものではありません。

 最後は、会社が成功報酬型給与体系に切り替え、彼は結果が出せず辞めていきました。それもそのはず、あんなに毎日電話で無駄話をしていたら、成果など出るわけがありません。

 何が何でも、短くしなければいけないというわけではありませんが、電話は突然の来訪者です。仕事での電話は、特に敬意を表すためにも、相手の時間を奪わないように気を遣い、話はポイントをついて短くしましょう!

■仕事のルール84「できる人の言動から学ぼう」

 顧問先のベンチャー企業に伺ったところ、早すぎて社長はまだ出社されていませんでした。担当者に会いに寄ったら電話中。聞くつもりはなかったのですが、ついつい彼女のいつもながらの見事な電話応対の声が耳に入ってきます。

 「おはようございます。○○○株式会社でございます。」

 「・・・・」

 「はい、○○○工業の東田課長様でございますね。いつも大変お世話になっております。私、経営企画室の大木と申します。町田でございますね。町田は、本日午前中はお客様を訪問致しておりますが、午後1時には戻ると申しておりました。お急ぎでございましたら、至急こちらから連絡をとるように致しますが。それとも私の方で何かお手伝いできることがございますでしょうか?」

 適度な声の大きさ、言葉の歯切れの良さ。あまりに見事な応対に感心して聞き惚れておりました。するとその直後、新たに電話が鳴り、新人らしい若い女性が電話をとりました。

 「○○○株式会社です」

 「・・・」(先方)

 「はあ、町田さんはまだ来てません。あ!どこかに寄るって言ってた気もしますが・・・」

 「・・・」(先方)

 「え!私入ったばっかりなので、細かいことはわかりません。彼の予定も聞いていませんし・・・。本人じゃないとわからないので。言っときますが、また後でかけ直して下さい」

 あまりの二人の対応の違いにショックを受けました。ベテランとはいえ、二人が同じ会社の同じ部署の社員とは信じ難い思いでした。聞いたところ、その中途採用の新入社員は入社して既に三ヶ月は経過しているとのこと。

 電話応対は苦手だとのことですが、あんなに素晴らしくできる先輩が隣に座っているのに、なぜあの新人さんは彼女から学び、いいところを真似しようとしないのか不思議です。

 個人主義・マニュアル化されつつある仕事環境ですが、できる人の言動から学ぶことが最も効率的効果的仕事習得法であるのを、若手のみなさんには分かってほしいものです。

■仕事のルール83「聞く前にまず自分で答えをだしてみよう」

 「わからないことがあったらとにかく質問しよう!」と推奨しています。しかし、聞く前にまず自分で答えを出すことも薦めます。まったくわからないのに聞かないのも困りますが、考えもしないで答えを最初から聞くのは、「私はバカです」と言っているようなものです。

 「わからない」という現象には、2種類があると思っています。

 1つは「どんなに考えても答えがでてこない」状態。そしてもう一つが「話を聞いた直後の今わからない」です。

 自分が質問される立場だと考えて見ましょう。何か仕事上の指示をだした途端、すぐに質問されたらどう思いますか?

 「自分で考えろ!」って思いますよね。質問にはその仕方というのがあるのです。まずは、間違えてもいいから自分で考えてみます。もちろん、考えの過程も明らかにしていきます。そして、答えが出たときに、上司に「これはこれこれ、こういうことで、こうすればいいのですか?」と、何をどう考えて導かれた答えかわかるように質問すればいいのです。

 質問は、ただ「聞く」という意味ではありません。考えて導き出した答え、あるいは考えても導き出せなかった経緯を明らかにして、ものを問うのです。

 新入社員時代、超忙しい上司についた私は、まったくわからなければ質問はしましたが、その前に徹底的に調べました。ただでさえ頭が悪いことで上司に迷惑をかけていましたので、自分でできることはまずやり、上司の時間と手間をとらせないようにしました。

 どんなことでも、立ち止まって自分で考える習慣をつけましょう。

 自分で考えて出した答えは、間違えていたとしても無駄にはならないのです。答えの正邪よりも、その考える過程がもっと大事です。なぜなら、考え方や過程が正しければ、次からはその問題に関しては、正しい答えが出せます。でも、たまたま答えが合ってしまった場合、考え方や過程が正しくなければ、次回からまた同じ問題で行き詰まるでしょう。

 何でもまず人に答えを聞くのではなく、自分で考える癖をつければ、創造力や問題解決力が飛躍的に伸びるでしょう。ビジネスにおいて、答えは必ずしも一つではなく、複数あることはよくあります。

 従って、自分なりの答えを見つけ自分なりの方法で実行することも、一人前の社会人としては当たり前のことです。

■仕事のルール82「まず目の前にあることに全力であたろう」

 少し仕事に慣れてくると、どんどん仕事を頼まれるようになります。

 とはいえ、仕事を任されることはなく、誰かの指示の下に動かなければならないでしょう。

 仕事を頼まれたら、まずスケジュールを考えます。

 優先順位をつけて、きちんと分かるようにファイリングします。その後何のために必要なものなのかを理解したら、とにかく目の前にある仕事に全力を投じましょう。他の仕事もやりながら、あっちの仕事もこっちの仕事もとやっていたら、集中力も欠けミスがでる可能性が増えてしまうのです。

 時間で区切るのも手です。何時まではこの仕事をやって、それ以降はあっちの仕事と。ただし、その仕事をやっている時は、とにかく集中して仕事に邁進することが、仕事を覚える上でも、生産性を上げるためにも、また自分の評価を上げる上でも必要なことです。

 自社の経営、顧問先への経営支援・コンサルティング、他社の役員としての活動、本・雑誌のための執筆、社内外組織主催の講演、NPO法人・慈善事業団体への理事長・理事としての活動、教育・研究機関への支援。私の毎日の活動内容です。すべて独立したものですので、同時に進めています。が、もし、目の前にあることを全力でやらなければ、集中力を欠きリズム・調子を崩し、波及的に他の活動にも影響を与え、全てが狂い始めるでしょう。

 人間は機械と違います。

 精神的なものが仕事の成果を大きく左右させます。例えば、汚い場所や落ち着かないところでは集中できにくいため、仕事の効率も下がります。そんな中で無理して仕事をしても精神衛生上悪いので、ストレスがたまり病気にもなるでしょう。

 仕事に全力であたれば、自ずと集中力もつき、仕事の密度も高くなります。そして慣れてくると仕事に費やす時間も短くなり、効率もどんどん上昇するのです。

 そんな姿を上司が見ていれば、評価も上がり、少しずつ責任のある仕事を任せてくれるようになるでしょう。一生懸命、毎回目の前の仕事をこなすことは、例えミスをしたとしても、評価を下げることにはつながりません。むしろ、限界に挑戦して弱音を吐かず頑張っている姿を見ると、上司や周りの人たちもあなたのことを励まし応援してくれますよ。

 とにかく、目の前にある仕事を「片付ける」のではなく、「全力を持って丁寧かつ効率的にあたる」ことです。

■仕事のルール81「毎日、小さな成功体験を積み重ねよう」

 ピンチや失敗が重要な意味を持ち貴重な体験につながると話してきました。順調な人生では得られない経験や力が身に付くと。しかし、もう一つ「負け癖」がついてしまうことは、避けなければならないともいいました。

 正反対のことのように聞こえるかもしれません。でも、よく考えてみれば分かると思いますが、同じなのです。ピンチや失敗を通じて経験した幾多のことで、負け癖をつけるのではなく、逆境に強くなる経験を身に付けることです。負け続けることではありません。

 そのためには「成功する」という事実も身に付けなければならないのです。成功といっても、まだ仕事を全て任されることもないのに、どうやって成功したらいいのか。ほんの小さなことでもいいのです。

 小さな成功体験ですから、何でもいいのです。

 今までできなかったちょっとしたことが今日できた、ということです。例えば、毎日飛び込み営業に行っても、どこの営業先企業の社長にも会えなかったのが今日始めて会えたとか、人前で話すのが苦手なのに、今日の朝礼で初めて上手く話せ聞いていた人から誉められたとかです。目的は、ささいなことでも成功し続けることによって自信をつけることなのですから。

 私も小さな成功を積み重ねてきたからこそ、仕事に対する絶対的な自信がつきました。勿論、失敗も多くありましたが成功体験も積み重ねてくると、勝ち癖がついてきますから、失敗の体験も次の成功に結びつけるための大事な反省・分析材料になりました。

 テキサス大学経営大学院(ビジネススクール)で、ビジネス関連科目を教えるチャンスを得た際、最初の頃は講義で失敗ばかりしていました。声が小さすぎて受講者のほとんどが理解できなかったとか、間違った内容を教えていたとか、時間配分を失敗して試験範囲をカバーできなかったなど挙げればきりがないです。しかし、毎回失敗する毎に対策を考え次にはできるよう準備しましたので、失敗体験が成功体験へと段々変わっていきました。その結果、大学院側は、私との契約を2年で終わるところを、7年間と長期延長してくれました。

 ピンチや失敗で得難い経験を積み、日々の小さな成功体験で「成功する喜び」を感じていけば、身に付いた経験と勝ち癖から大きな成功を手に入れることも可能なのです。

■仕事のルール80「ベンチャー人間を目指そう」

 「ベンチャー人間」という言葉に、どんなイメージがあるのでしょうか。人よりも秀でた感性と能力があり、統率力とチャレンジ精神に優れ、時勢を読むのがうまく、新しいビジネスを立ち上げ成功させる人。つまりスーパーマンを想像したりしませんか?

 確かに、マスコミなどでもてはやされるベンチャー社長に対するイメージは1元的で、よくその様に見られますね。その裏にある努力や修行、勉強などはあまり表にでることはありません。

 ベンチャーは、冒険や冒険的な企て、投機などと訳されます。冒険心を持ってチャレンジする人間は、さまざまなアイデアを持っていることでしょう。

 冒険家と言われる人たちは、その冒険のためにあらゆる準備をします。最悪のケースを想像して、そのための脱出方法だって何種類も考えていくはずです。なんといっても、命が掛かっていますからね。

 ベンチャー人間とは、冒険心がある人ということです。様々なことにチャレンジする精神、そして、そのための準備を怠らない心がけ。それがあれば社会で苦境に立たされた時にでも、自分で脱出する術を考えられるからです。

 また、ベンチャー人間は起業家という意味合いもあるでしょう。会社員であっても、持っている仕事で自分が責任者だと想定して動くことは、責任の所在なども明確になるものです。そういう、起業家意識を持つこともベンチャー人間といえるのです。

 今、社会ではサラリーマン的な生き方をしている人が大多数で、会社員でベンチャー的な生き方や仕事をしている人、即ちベンチャー人間はほとんどいません。しかし、不況が続く現在、企業はそのベンチャー人間を求めています。ですので、若いときからベンチャー人間的生き方を目指した方が、勝ち組になれる可能性は高くなります。

 ベンチャー人間は責任感があるので、慎重ではありますが、冒険心と創造力溢れるチャレンジャーです。社会、特に会社がベンチャー人間を求めている以上、そうなれるよう自己変革したいものです。

■仕事のルール79「コピーする時は、誰が何のために使うか考えて」

 新入社員のうちは、上司からコピーを頼まれることが多いですね。

 その時に、「何に使うのか」「誰が見るのか」「何部必要なのか」「サイズは?」などを確認するのは基本です。

 ここにもう1つ工夫を加えましょう。

 コピーの原本を1つ1つ確認すること。元が曲がって印刷されていたらそのままコピーすると曲がってしまいます。また、原本に汚れや印刷ずれができていたら、その部分は修正液できれいにマスキングし、コピーされたものには、写らないようにします。コピー機のガラス面の汚れもきれいに拭き取りましょう。

 もしも、会議で使うものだったら、参加人数にプラスして何部か予備にコピーをとっておくのも重要です。その時、急に参加人数が増える可能性もあります。

 また、参加者の中に年配の方がいる場合には、文字が大きくなるように拡大コピーもとっておくことも重要でしょう。

 正直言って、私は会社勤めしていた際、仕事上での能力はいつも並以下でした。そんな私をアメリカ人上司は引き上げ、スピード出世させてくれました。経験・知識・専門能力という面では人よりも劣っていた私を上司が評価してくれたのは、この「気を遣う」部分だと確信します。

 能力面ではとても他の社員に勝てないと判断した私は、戦いの場をコピーなど含めた、気配りが必要なところに持ち込みました。案の定、仕事のコアの部分しか考えていなかった他の社員は、コピーなどどうでもよく、いい加減なことをしては上司からの評価を悪くしていました。見るに見かねて、「コピーも気を遣って真剣にやろう!」と私が進言したら、「それじゃあ、これから私達の分までコピーしてよ」って皮肉一杯。

 要するに、使う人の立場に立って小さな作業から気を遣って行うことです。そういう1つ1つが、仕事の成果と同様に評価の基となっていくのです。

 例えば、同じ程度の仕事の能力だったら、少しでも気を遣える人と組んだほうが気分もいいですし、効率も上がるというものです。気を遣うことは、「人の身になる」ということですから、心の持ちようでできるのです。

■仕事のルール78「書類のファイリングを即座にしよう」

 整理整頓はとても重要です。きれいな場所で仕事をする方がいいというのはあたりまえなのですが、一つ一つ片付ける時間と手間を考えても、効率は整理していた方が上がります。そこで、整理の仕方というものがあります。それは、結局は自分で見つけなければいけないのですが、私の方法のポイントを紹介します。

 最初の仕事だった場合、その仕事は一つの仕事としてファイルします。袋に入れて、その袋に仕事の件名を書くだけでもいいでしょう。そんな仕事の件名が書かれた袋が3つ4つ揃ったときに、一度、全て取り出してみましょう。仕事という縦割りのパッケージだけではなく、横に関連性のあるパッケージが見つかりませんか?市場調査情報など、1つの仕事だけで他の仕事には使わないというものではありませんし、また、そのような情報があれば、企画のヒントになったりもします。

 書類のファイリングは、自分で創意工夫して、できるだけ使いやすく、取り出しやすくしましょう。タイトルには日付を入れたり、キーワードを書き込んだりなど、自分なりのジャンル分けをすれば完璧です。

 どのファイリング方法を採用するにしても、絶対にしなければならないことがあります。それは、仕事の情報や資料ができたら、即座にファイリングすることです。時間があるときにファイルを作ろうと思っていたら、どんどん違う情報や資料ができ、溜まっていきます。そのうち、前の情報や資料が必要になるわけですが、ファイリングしていないですから、探し回って時間とエネルギーのロスをします。その上、締め切りに間に合わなくなる等、仕事上でのダメージが発生します。ですので、絶対に情報や資料を溜めず、すぐにファイリングすることです。

 このように、ファイリングがきちんとできていないと、いざ必要となった時にどこにあるのか、探すことから始めないといけません。それは時間の無駄でファイリングしている意味がありません。効率よく、物事を行うためにも、ファイリングは大きな武器になるのです。

 人のファイリング方法を真似ても、自分に合っていなかったり、上手くいかないことが多いので、自分独自のファイリング方法を見つけ出し実行してみて下さい。

■仕事のルール77「好きな本を読みまくろう」

 恋愛小説、サスペンス、SF・・・。小説にもさまざまなジャンルがあります。また、ノンフィクションも、あらゆるジャンルが揃っています。

 「仕事が忙しくて、本なんて読んでいる時間がない」

 という人もいますが、いくらでも本を読む時間はあるはずです。

 本を読むべき理由は、一人の一生では体験できないことがたくさん詰め込まれているからです。例えドロドロ恋愛小説であろうと、絶対にこんな状態は自分の人生にはありえない、と思うようなものであろうと、仕事関係に置き換えてみたら、意外と似ていたりしませんか?

 また、文章を多く読むということは、知らず知らずのうちに、文章を書く能力を上げる側面もあります。文章を読む力、読解力が高まると、物事を頭の中で整理することが訓練されます。物事が整理されれば、何かを相手に伝えるときに、きちんと整理して話すこともできますし、文章も同じように整理して書くことができるようになるのです。

 私は高校を卒業するまで、読解力が大嫌いで大の苦手でした。その分、楽なテレビばかり観ていました。ところが、自分の進路について模索始めた際、本屋で面白そうな本を見かけて買ってみたら、楽しくて一気に読んでしまいました。それから好きな本をどんどん読むようになり、今では年間300冊以上は読んでいます。ただ好きな本だけ読んでいますが、段々思考能力や表現能力が高まってきているようで、仕事に大いに助かっています。

 出版されている本は、第三者に読まれることを前提に書かれています。

 そのため、別の場所で説明する必要のない書き方がなされているはずです。また、書籍という商品になるわけですから、書店に並ぶまでに何人もの人の目に触れているのです。その間に、不鮮明な表現などは加筆されたり、変更されてきています。

 そのような文章であれば、ジャンルを問わずどんどん読むべきです。

 トイレの中でも、また入浴中だってその気になれば読めます。電車の中など、ちょっとした時に読めますよね。

 どんどん読んで、その表現力などを吸収していきましょう。

 読書は、読解力がつくと同時に社会人としての表現能力も高まります。

 ですので、読書を続かせるためにジャンルはなんでもいいので好きな本を乱読してみて下さい。

■仕事のルール76「ピンチをチャンスに」

 順調に人生を送ってきた人が、小さなつまずきでも耐えきれず、そのままドロップアウトしてしまうことがあります。打たれ弱い、という言い方をされることが多いですね。

 昔は「苦労は買ってでもしろ」と言われていました。ピンチも苦労の一つです。わざわざ買う必要はありませんが(笑)。ただ、ピンチは人を成長させます。苦境に立ったとき、人は全ての感覚を使って、その危機から脱しようとします。そこには、通常では思いつかないようなアイデアが埋まっているのです。いわゆる「火事場のバカ力」ですね。

 リミッターが切れた段階で、ようやく出てくる力のことです。これは潜在的に持っているのに、危機に立たされるまで浮かんでこない種類のものなのです。ピンチ・苦境に何度か立たされると、脱出方法も学ぶようになります。最初の機会ではピンチだったかもしれませんが、同じことに2度目にあったときには、それはすでに「経験済み」となるわけですね。

 私は、経営大学院留学のため、日本の大学の卒業式を待たず、さっさと渡米してしまいました。7校も受けたので、どこか1校くらいは入るだろうと思い、周りの人に留学宣言したところ、祝賀会までやってくれました。ところが渡米後、すべて受験に失敗。途方にくれていたところ、元々その会社で働きたかったため経営大学院を受験した、米国大手国際会計・経営コンサルティング会社に無事採用。ピンチでしたが、結果的にはチャンスになりました。

 ただ、ピンチの時には必ず脱出できるとは限りません。脱出できず負けてしまうこともあります。負けから学ぶことも大いにあります。これも経験です。ただし、この経験を以降、間違えて使っては困ります。負けることに慣れてしまう、いわゆる「負け癖」がつくような経験にはしてはいけないのです。負けた時にでも、負けを認め、その中から負けた理由・原因を学び、次に負けないように回避方法を身につけて、次にはしっかり脱出する。負けの経験は、次の価値につなげる経験値としなければ、経験が無駄になってしまうのです。

 ピンチを知っている人間は、それだけ通常では出てこない力を使った経験があるということになります。これは、ピンチに陥っていない人よりも大きな知恵にもなり、大きな武器にもなるのです。こんなチャンス、望んで手にできるものでもありません。多いにピンチで学び取ることをお薦めします。

 つまり、ピンチは望んでもできない大きな経験ですよ。

■仕事のルール75「経済力より信用力を」

 ライブドアの社長、堀江貴文氏。今、彼の名前を知らない人はいないでしょう。彼の会社と個人名が一躍新聞紙上をにぎわしたのが、プロ野球新規参入騒動の時です。経営不振で解体・合併を余儀なくされた「近鉄バッファローズ」の買収に手を挙げたのでした。

 当時、彼の話は何も間違えてはいませんでした。

 「自分のところにはお金がある。地元ファンも存続を望んでいる。選手も望んでいる。それなら、お金のある自分たちが買い取って、経営をしましょう」というものでした。この時、プロ野球経営者やその周辺は、彼の発言に対して反発したのではなく、彼の容姿でした。

 曰く「人前に出るのに、Tシャツとはなんだ」「礼儀知らず」「金さえあればいいと思っているのか」・・・。

 経営陣が経営に失敗し、選手やファンを路頭に迷わせようとしている時です。その責任者が「お金があるから買うよ」と言っている人に、そんな物言いがあるものかと思ったものです。堀江氏が問題提起したプロ野球問題は、結局、一つのチームがつぶれ、新しいチームが生まれるという「一

体なんの騒ぎだったのか」という結果に終わりました。しかも、新しいチームを作ったのが、同じIT関連企業の楽天だったのです。

 このとき、社長の三木谷浩史氏は、自慢のひげをそり落とし、ばっちりスーツで決めてきたのです。容姿は信用にもつながるという、日本の不思議なところでもあります。

 その後、ニッポン放送の買収劇、いわゆるホリエモン騒動に関しても、堀江氏の行動は法律的になんの問題もない、と東京高裁レベルで判断されたにも関わらず、非難を受け続けました。これはひとえに「経済力」よりも「信用力」の問題ということです。

 マイクロソフトのビル・ゲイツもTシャツで人前にでます。しかし彼はソフトウェアを作って広めたという信用が、容姿よりも大きいのでしょう。

 「お金があれば、格好なんてどうでもいいじゃないか」

それも事実かも知れません。しかし、信用できない人と仕事ができますか?

 信用を構築するまでは、見た目で勝負するのが一番なのです。経済力をひけらかすと逆効果なのです。

 一番はお金ももっているが、そのお金を生み出したのが信用力、というのが理想ですね。

 お金で信用は買えません。  しかし、信用がお金を生むことはよくあることです。

■仕事のルール74「出会いを大切に」

 日本には、お年寄りから生まれた赤ちゃんまで入れて、1億3千万人がいます。80歳まで生きるとして、生まれた瞬間から年間20人の新たな人に出会い続けたとしても、1600人にしかなりません。月に20人出会ったとしても、1万9200人です。それほど、その人と出会うことは貴重なのです。

 年間20人とすると人生で1600人。その人は1600分の1ですが1億3000万人の1でもあるのです。それほどの確率でせっかく出会ったのですから、そのままにしておくのはもったいないですよね。

 仕事で多くの人に出会うとしても、一生で1600人はかなり難しい数であるでしょう。生まれた直後の出会いは本人は分からないわけですし、会社を退職してしまうと、なかなか新たな人に出会う機会は減っていきます。

 先日、ベンチャービジネスで成功した若手起業家の会に参加しました。彼らになぜ成功できたのかを伺ったところ、皆さん一様に「運がよかったから」と言います。じゃあ、なぜ運がよくなったかと聞きますと、「いい人と出会ったから」とか「ビジネスパートナーとの出会いがあった」というのです。

 何においても成功に欠かせないことは「いい出会い」だと講演の度に私は話しています。なぜ「いい出会い」が成功に必要かと言いますと、いい人がいい情報やビジネスチャンスを持ってきてくれるからです。

 人間、能力があると言っても、一人の人間ができることは限られています。ビル・ゲイツにしても、マイケル・デルにしても、勿論、能力があったのは言うまでもありませんが、いい人に出会い、協力・支援してもらえたからこそ、若くして短期間で世界的な企業を創り上げ、莫大な個人資産も築き上げることができました。

 人との出会いを大切にすれば、ビジネスはもちろん、人生にも大きな価値と幸運が生まれます。その人の価値観、人生観、死生観など語り合うこともできますし、それによって自分の中に新たな考え方も生まれるのです。

 せっかく出会えたのですから、自分の人生の中でも、その出会いを色のあるものにしようではありませんか。

■仕事のルール73「返事はその日のうちに」

 新しい仕事の依頼があったとします。ただし、その段階ではスケジュールの確認ができません。安請け合いはしたくないので、返事は「後ほど、ご連絡致します」となるでしょう。この「後ほど」が曲者です。どれほどの後ほどなのか。いつまで待てばいいのか。

 待っている身になれば、返事はできるだけ早く欲しいものです。そこで、私は「返事はその日のうち」を実践することを進めているのです。

 ここで、「返事」を「YES」あるいは「NO」と決め込んではいませんか?

 必ず、どちらかの返事をしなければならないとなるから、その日のうちの返事がしづらくなるのです。

 仕事でどうしても会わなければならない人がいました。こちら側の都合ですが、どうしてもその人の話を聞きたかったのです。そこで連絡したところ「そちらの都合のいい日時をいくつかあげていただけませんか?」との返事。

 もちろん、複数回の候補を伝えました。すると「スケジュールを確認してご連絡致します」との返事でした。

 ところが、候補に挙げた最初の日時が来ても返事がありません。その時間は「もしかしたら、会えるかも知れないから」と空けてあります。折返し電話がもらえるというのに、こちらから電話をするのも気が引けましたが、再度連絡すると同じ返事でした。「これは、会う気がないな」と諦めたのですが。

 一方、ほかの方にアポイントを取りました。会話の流れは、全くと言っていいほど同じものでしたが、最後に一言「この日程の候補で時間がとれるかどうか、あるいは本日中に日程を決めるか決められないか、夕方までにはご連絡致します」と付け加えられたのです。

 そうなると、取りあえず待っている時間は今日の夕方までになります。

 明日になれば、また違った予定を組むことも可能なのです。

 このように、返事をその日のうちにというのは、「何らかのアクションをその日のうちにする」ということです。「本日はきちんとした回答はできません。明日まで待ってください」というのも、返事の一つなのです。待っている人の身になれば、容易にわかりますが、そこに気付くか気付かないかで電話の印象は大きく変るのです。

 その日のうちに何らかの’アクション’を伝えることを心がけたいものです。

■仕事のルール72「夢を持って思い続けよう」

 子供の時に、あなたは何になりたいと思っていましたか? パイロット?野球選手? 看護士? 保育士? さまざまな夢があったと思います。

 その夢といまの仕事は一緒ですか?

 「子供の頃の夢なんて、叶うものではないよ!」

 本当にそうですか?

 子供の頃になりたかった夢の職業に就くために、どれだけ努力したのでしょうか。努力しても、確かになれないものもあります。プロ野球選手やJリーガーなど、努力でどうにかなるものではありません。

 でも、夢に向けて努力をするということは、その夢が叶わなかったとしても、次の夢、次の目標に向かう原動力になったりもするものです。さらに十分な努力をしたというものは、結果いかんに関わらず、大きな自信と貴重な経験となって身についているはずです。

 私の夢は歳とともに変りました。小学校3年生までは、色々なユニークな建てたかったので大工さん、お金を貰いながら日本中を回りたかったためタクシーの運転手、寿司が好きな両親に毎日思いっきり寿司を食べさせてあげたかったことから板前さん、の順です。

 小学4年からは水泳を本格的に始めたので、高校まではバタフライのオリンピック選手。高校3年の夏に米国に1ヶ月ホームステイした後は今の職業である国際経営コンサルタント。頭が悪く英語が苦手だった私にとっては最後の夢は不可能に近いものでした。夢は努力も何もしなければ、本当に覚めてしまうものなのです。夢に努力が伴えば、現実的な目標になり、目標は人を前向きにし、モチベーションを高め、時にはリラックスや楽しみも伴うものです。

 「いつまでも夢ばっかり追って、子供みたいな・・・」

 という人もいますが、私はそうは思いません。いまの仕事の目標だけでなく、もっと大局的な、もっと将来的な夢を見て、そこに向けて努力することが、なぜ子供のようなのでしょうか。

 私は言います。おおいに大きな夢を持ってください。  夢のない人には成長がありません。現実をしっかり掴んで、夢を見ることは人生をリッチにするとてもすばらしいことなのです。

■仕事のルール71「感動したことを話そう」

 本を読んだり映画を観たら、感動することがあるでしょう。その感動した感情はどうしていますか?恋人と一緒に映画にを観たら、本当の気持ちを隠して、相手にあわせたりしていませんか?

 自分の本当の気持ちを表に出すことは、簡単なようで難しいものです。

 小泉純一郎首相の言葉で「感動した!」というのがありました。ケガを押して土俵にたった横綱貴乃花(現貴乃花親方)が優勝を決めたときに、トロフィーを渡す際に叫んだ一言です。

 「痛みに耐えてよく頑張った」という言葉が頭に来ていたんですね。このように、どんな物に関しても感動したら、その理由があるはずなんです。

 感動を人に話すことは、その時の自分の動きを説明する必要があります。分かってもらうため、共感してもらうためには、整理して話さないといけません。感情的に話しているだけでは伝わらないのです。同じ映画を見ているひとならば、ある程度、勢いで伝わる可能性はありますが、同じところに感動していなかった場合は、「自分はなぜ、どんな理由」でそこに感動したのか、やはり説明しなければいけないでしょう。

 小説などはなおさら困難かもしれません。文字だけを追うわけですから、たとえ同じ本を読んでいたとしても、登場人物の容姿などはそれぞれ違うでしょうし、部屋の作りなども違っているはずです。

 その中で、物語を説明し、感動した箇所を説明し、そしてどういう理由で感動したのか相手にわかるように説明するのです。

 なぜ、感動したことを話さなければならないのでしょうか。

 感想文を書けばいいじゃないか。果たしてそうでしょうか。相手の反応はその相手がその場にいないとわかりません。仕事でも説明しなければいけない場合には、秩序立てて語らなければいけない場面はたくさん出てくるのです。  自分の感動したこともきちんと説明できないようでは、仕事上相手を納得させることは難しいと言えます。きちんと状況などを整理して説明し、相手を説得する、その訓練のためには、感動したことを人にきちんと伝えることは早道なのです。

■仕事のルール70「締め切りや約束は絶対に守る」

 物事にはすべて終わりがあります。仕事もそうです。期限というものが必ずついて回ります。また、人との付き合いには、約束というものもあります。

 これは、期限や約束を決めたときに、必ず同意しているはずです。双方が「その日にできる」「可能である」と同意した結果、決められたものでしょう。一方的に押し付けられたものであっても、やると決めた時点で、同意したということになります。

 となると、同意したものは実行すべきです。無理をしてでも絶対に守るこれが基本です。

 とはいえ、守れなくなる事態も発生しますね。さぼっていたわけでもなく、忘れていたわけでもないのに、どうしてもその日時が不可能になってしまう。たとえば、事故にあって入院してしまったなど、不測の事態です。

 それでも、自分の代わりの人をすぐに決めて、期限は守るべきではあります。

 不測の事態が起こった場合、すぐに何をなすべきか。分かった時点で速やかに先方に連絡するのです。なぜ約束や期限を守れなくなってしまったのか、その分どういう形式をとるのかなど、それらフォローの提案をきちんと提示し、相手に受け入れてもらう努力をするべきでしょう。

 学生と社会人、特にプロフェッショナル(プロ)との大きな違いの一つに、締め切りと約束を守ることへの厳格さということがあるのではないでしょうか。米国の経営大学院(ビジネススクール)で夜間のMBAコースを教えていた頃、この差を幾度となく経験しました。

 例えば、宿題やレポートの課題をだすと、昼間働いているバンガー、弁護士、ビジネスパーソンなどは絶対にやってきました。仕事や病気などでクラスに来られない時でも、事前に連絡があり、クラスまで届けるアレンジをします。

 一方時間があるはずのフルタイムの学生の方は、よく宿題やレポートを忘れていたり、時間があったにもかかわらずやってこないのです。結局、時間ではなく、自覚とコミットメントの違いだったのです。

■仕事のルール69「電車・エレベーター内、他人の前では電話しない」

 携帯電話が広がって10年以上が経ちます。最近では小学生までもが携帯電話を持っています。本当に、ちょっと前までは、外出先で電話をかけなければならないときには、公衆電話を探したものです。後ろに人が並んでいたりすると、可能な限り会話を短くしようと工夫したものです。また、すぐ隣でも電話をしている人もいるので、結構、小さな声を心がけていたのではないでしょうか。

 ところが、携帯電話が一般化してから、みなさんが町中でもどこでも、電話できるようになった代わりに、周辺に気を遣うことを忘れてしまったようです。電車の中でどんなにアナウンスしても、いまだ呼び出し音を大音量で鳴らしてる人もいます。

 こういう時には、「最近の若者は」というのでしょうが、呼び出し音を大きく鳴らしているのも、大声で話している人にも、世代差はないようです。

 日本人は「恥の文化」を持つと言われてきました。恥ずかしいことは人前ではしなかったのです。語学を学ぶときには足かせになっている部分もありますが、公共の場、というものを考えると、こと携帯電話に関しては「恥の文化」を持ち続けて欲しいものです。

 電話の内容がプライベートなら、プライベートを他人の前でさらけ出していることになりますし、仕事の話なら極秘事項もあるかもしれません。

 少なくとも、電車などの交通機関やエレベーターなどの密閉された空間では、電話で話をするのは止めたいものです。

 留守番電話機能もついていますので、すぐに折返し電話できるはずです。もしも、どうしても受けなければならない電話だとしたら、出ることはやむを得ないかもしれません。ただしその場合も「5分以内に折り返します」などで、すぐに切りましょう。電車だったら次の駅で降りればいいですし、それが無理なら電話できる時間を相手に伝えればいいだけです。

 本当に今すぐ、という要件は意外と少ないはずです。ほんの数年前までは携帯電話なんてない中で、普通に生活していたのですから。

 携帯電話を使うなというのではなく、使う場所を考えて、極力マナーを持って利用したいものだと言っているのです。

 折り返し電話をすることは難しくありません。

 どこでも大声で話している人って格好悪いとおもいませんか?

■仕事のルール68「決断は素早く」

 時代はまさに ’タイム・イズ・マネー’ です。

 株式市場でも、ほんの数分の違いで大きな差が出ることはよくあることです。

 この10年でインターネットが世界中を網羅し、世界の距離も時間すら短くしてしまったようです。即断即決がなによりも望まれる社会になったといっても過言ではないでしょう。

 こういう話をすると、とにかくインスピレーションで行動すると受け取る人もいるのですが、私はそんなことを言っているのではありません。

 熟考することの大切さは変りません。

 大きな勝負の場合には特に熟考しなければいけません。取り返しのつかないことになる可能性があるからです。そして答えがでたら素早く行動するのです。

 熟考とは長い時間をかけて考えることではありません。

 深く考えるということなのです。今の時代、考える時間は短いほうがいいのですが、だからといって浅く考えて良い訳ではではありません。

 短い時間で深く考えるためには、訓練が必要でしょう。

 大学を卒業し、米国のプロフェッショナルな世界に飛び込んで愕然としました。今もそうですが、あまりに多くのことが連続的に発生し、即決しないと問題が起こるのです。どんどん決めていかなければどんどん問題が進み、やらなければならないことも増えていくのです。下手すると睡眠時間もなくなります。

 その時思いました。

 プロフェッショナルの証は、限られた時間内に深く考えてできるだけ正しい判断を下せることだと。

 まずは、どんなことでも短い時間で深く考えることを実践してみましょう。

 たとえば、今日身に付けるネクタイでいいんです。最初は3分などと時間を区切って、「今日会う相手の趣味は?」「気温は?」など次々に関連する項目を挙げ解決していく。ランチのメニューでもかまいません。「夕飯を食べるのが何時くらいになる予定か?」「消化にいいものの方がいいのか、それとも腹持ちのいいものにするのか」。そんな身近な決断でも訓練はできます。

 あまり難しく考えずに、肩の力を抜いてやってみてください。

 そうしていくうちに、ものをちょっとずつ掘り下げて考える能力がつき、そして素早く決断できるようになるはずです。

■仕事のルール67「他人と比較しない」

 受験戦争、競争社会、新階層社会、ヒエラルキー、これは比較が元になっている言葉ですね。受験戦争も自分との戦いだけでなく、他の受験生よりも一点でもいい点数を取ることを目標に勉強して、試験を受けないといけません。同僚との出世争いもそうです。

 でも他人と比較して自分を評価するということの意味を考えてみましょう。他人がいなければ、評価の基準がないということになります。あの人と比べて自分は・・・。では自分自身、個人ではどうなのか、という絶対評価はそこには生まれてきません。

 目指すべきは「あの人はこういう人だ」という評価なのです。

 誰かを目標にするのも、誰かをライバルにするのも、どちらもいいことだと思います。それが自分を磨く原動力になるのですから。

 競争相手を想定してはいけないというではないのです。それだけになってはいけないということです。

 他人と比較した偏差値教育やすべて満遍なくこなすことを重視する教育に合わなかった私は、日本では超劣等生でした。それが米国に行った途端、劣等生ではなくなりました。

 私はある分野の数学だけが大好きで、ある程度できましたから、それが米国では高く評価されました。ですので、その分野の勉強は好きで努力するため、さらに好きになり力もつき、成果を出していく私への評価は段々高まりました。その分野で国際的に認知頂いた時は、さすがに学者の道も考えました。

 米国に行って最大に得たことは自分が他人と比較しなくなったことです。

 また、他人と自分を比較させないことがこんなに気楽で自分らしさが出せるとは思いも寄りませんでした。

 自分への絶対評価があれば、目指すべきものもはっきりと見えてくるでしょう。やるべきことも見えるはずです。絶対評価同士で他者が、勝手に比べてくれるのはかまわないのです。

 自分自身の中では、常に「自分を磨く」ことを心がけ、絶対評価をあげていくことに努力すべきです。

 比べるべきは、去年の自分と今の自分、そして来年の自分です。

 そうすれば、たとえば配属先が変ったときでも、転勤となったときでも、転職しても、絶対評価はついてきます。自ずと自信にもつながってくるものです。

■仕事のルール66「毎日、To Do List をつくろう」

 仕事を覚えたての頃は、とにかくやることがたくさんあり、時間に追われる日々になってしまうでしょう。それもある意味では致し方ないかも知れません。

 ただ、毎日なんのために何をやっているか考える暇もなく、ばたばたと過ごしてしまっては、仕事を覚えるにも非効率です。そのため、会社にちょっと早めに行って、「今日やるべきこと」リスト(To Do List)をまず書き出しましょう。最初はそれだけでいいです。終わったものから線で消していくといいでしょう。

 とにかく、何をするかを理解するために書き出すことが必要です。

 書き出すことによって曖昧だったことがより明確になります。

 その作業に慣れてきたら、優先順位を付けていきます。仕事というのは時間とともに変化しますから、リストを作ったとしても途中で変ることもあります。もちろん、変更には柔軟に対応します。優先順位も同じで、朝考えた優先順位に縛られることはありません。

 自分が考えていた優先順位と、実際の仕事の流れの差が分かるだけでも十分、リストを作った価値がありますし、仕事を進めていく上で大きな効果があります。

 米国の一流のプロフェッショナル(弁護士、会計士、ビジネスパーソン、バンカー、技術者、研究者など)や経営者は、このリストを作り毎日実践しています。また、多くの米国企業は社員にリスト用紙を定期的に配っています。日本でも生産性を重視している職業であればあるほどこのリストを利用している人は多いのです。

 仕事の流れも優先順位も覚え、柔軟に対応できるようになった。そうなったとしても、リスト作りは続けましょう。人間は万能ではありません。つい何かを忘れてしまうことだってあります。リスト作りは習慣とするといいでしょう。1冊のノートを作れば、仕事の一連の流れも読めるようになります。

 他の仕事で何か躓いたときに、そのリストノートに解決のヒントが隠れているかもしれません。

 全ての経験を100%覚えていることはできません。

 書きとめておけば、いつか役に立つこともあるのです。