この山はきれいな三角形をしているので、山頂に雪がある時期には、駿河湾岸からでもはっきり分かる。周りに高い山がないので、独立した山のようにも見える。標高3000mを超える南アルプスの山の中では、山頂へ立つまでのアプローチが長いため、どうしても後まで登れずに残る山のようだ。
塩見岳は2つのコブからなっていて、低い方の西峰(3047m)に二等三角点がある。大展望が広がる中で、特に大井川東俣の谷を挟んで農鳥岳から南下する尾根上に、広河内岳、白河内岳、黒河内岳という山々が美しい稜線を見せている。
南アルプス中部で抜きん出た山だけに登山記録も古くからあり、明治35年に家中虎之助が測量のため登頂、二等三角点を選点している。登山者では河田黙が同42年に三峰川側から登頂している。一般に登れるようになったのは昭和10年の三伏(さんぷく)小屋建設以降で、鹿塩温泉を経営する平瀬理太郎が建てたもの。
飯田線伊那大島駅からバスで塩川へ入り、三伏峠を経て塩見岳の頂上に立つ(9時間30分)のが普通のコースだが、健脚者は北岳から間ノ岳、三峰岳、熊ノ平とたどって塩見岳の頂上へ立ち(間ノ岳から6時間30分)、満足感にひたって前者の逆コースで帰る。大半の登山者が歩くコースはこのふた通りである。いずれにしても塩見岳を征服するにはかなりの道のりである。
もっと山慣れした人には、身延線の身延からバスで新倉まで来て、転付(でんつく)峠を越えて二軒小屋に入り、大井川の東俣、西俣の合流地点から蝙蝠(こうもり)尾根に取り付き、北俣岳から塩見岳へ達するコース(二軒小屋から山頂まで9時間)が面白い。以前のようなヤブや倒木は整備されて、かなり歩きよくなっている。
塩見岳に短時間で登りたいという人に、自家用車を使って塩見岳の裏側から入る、とっておきのコースを紹介する。まずは三峰川の上流、小瀬戸ノ湯を目指す。以前は小瀬戸ノ湯近くにゲートがあったが、現在はさらに上流へゲートを移して、利用しやすい林道になっている。5kmほど奥の巫女渕のゲートに車を残し、林道を1時間弱歩くと橋があり、登山口の標識がある。地形図で大黒沢が注いでいる所である。このコースは権右衛門山から北方に張り出した尾根に取り付くのだが、尾根に出るまでは急登でも、出てしまえば、こんな所にこんないい道があったのかと驚くばかりである。塩見小屋へは6時間もあれば十分達することができる。登りつめて行くと権右衛門山直下を左手に巻いて、小屋の少し手前で三伏峠からの道と合流する。
















































































































































































































































































































